THE OUTSIDER(ジ・アウトサイダー)は、前田日明がプロデュースするアマチュア、セミプロ選手による総合格闘技大会。主催はリングス。2008年3月30日に第1回大会が開催された。
http://ja.wikipedia.org/wiki/THE_OUTSIDER
いわゆる「不良」などの若者に格闘技を通じた更生の道を用意し、優秀な選手をDREAMやUFCといったメジャー団体を含めた大会にプロデビューさせることを目標にしている[1]。
「不良達ヨ、覚醒セヨ。」というキャッチフレーズで「不良」同士が試合をするというコンセプトであったが、出場資格が「年齢16 – 35歳まで、プロでの試合経験が3試合以下の者」とされたため、「不良」ではない選手も多数出場した。
<主なカード>
「ハマの狂犬」黒石高大(神奈川) VS 「山口の暴走戦士」秋山翼(山口)
「インテリジェンスタイガー」秀虎(東京) VS 「メイド・イン・ジャングル」山崎ターザン諭章(山口)
「禅道会の超新星」梅原直紀(静岡) VS 「リアルストリートファイター」アパッチ小次郎(福岡)
「夜櫻會三代目」加藤友弥(東京) VS 「生きる都市伝説降臨」与国秀行(東京)
いきなり第1試合からその後“OUTSIDERの顔”的存在となる、“ハマの狂犬”黒石高大選手の登場である。煽りVの出来がこれまた秀逸で「16(歳)で鑑別(所)入って……」と語る黒石選手が、「何をやって入った?」という質問に対して赤裸々に答えていたりする! さらによくテレビで見かける『警視庁密着24時』的な映像の中、「なんで練習なんかしないといけないの?」と語る黒石選手に対し、保育士でもある対戦相手の“山口の暴走戦士”秋山翼選手が、山口県にある毛利道場で黙々と練習している映像まで収められているので、両選手の“キャラの違い”がよく分かる。
試合も秋山選手がスリーパーを仕掛けたところで場外に転落したシーンをはじめ、伝説のジャーマンや試合後の乱闘シーンまで見ることが出来る。
第一戦で観客のハートを掴んだ選手といえば、“リアルサラリーマン”酒井知一選手も忘れられないが、黒縁メガネ&七三分け&薄ら笑いでの入場から、試合後の花道で勝利者賞のメダルを落としてしまう笑撃シーンまでバッチリ収録されている。
また“名門 鈴蘭高校裏番長 格闘彫師”吉永啓之輔選手の煽りVでは、吉永選手の体に見事な入れ墨を彫った、吉永選手にとっては師匠にあたる彫り師も登場。さらに、吉永選手がある“敗北”から格闘技によりのめり込むようになったというエピソードと、入れ墨に対する前田実行委員長の見解はなかなか興味深い。
メインの“夜櫻會三代目”加藤友弥選手vs“生きる都市伝説降臨”与国秀行選手の煽りVには、加藤選手に指導する伊原道場の伊原会長も登場。さらに加藤選手はOUTSIDER出場が決まった際、トンデモナイ苦難が襲いかかってきたことを告白している!
この試合は第一戦のベストバウト賞に選ばれ、加藤選手はMVPにも輝いた。アマチュアの大会でありながら、メインの試合がメインに相応しい素晴らしい試合だったことも、THE OUTSIDERが成功した1つの要因かもしれない。この試合はノーカットで収録されているので必見! また、加藤選手が試合後、客席にいた母親に向かって「勝ったぞ、オカン!」と叫んだ理由が、このDVDを見てよく分かった。
煽りVは全選手についているわけではなく、上記の選手のほかにアパッチ小次郎選手や堀鉄平選手など、その後OUTSIDERで中心選手となる選手につけられている。単にインタビュー映像とナレーションだけでなく、地元までカメラが行って様々な映像を撮ってきている点は素晴らしい。
試合は実況や解説の音声はない分、歓声やセコンドの声がよく分かるし、インターバル時にはナレーションでちょっとした解説が入っている。さらに試合後に前田実行委員長の解説が入っている試合もある。また、WOWOWのリングス中継を担当していたウッドオフィスが制作協力をしているからなのか、リプレイやリングス名物の天井カメラ(※実際には2階バルコニー席から)を効果的に織り交ぜながら、なかなか見やすい作りになっている。
大会から復活した“赤ブレザー姿”の前田日明実行委員長がリング上で挨拶する映像に、何とも“リングス”らしさを感じる。
まずDVDのオープニングを飾る“喧嘩所茨城制圧 ザ・WORST”加藤紘也選手の煽りVでは、「まさにこの男、悪の権化!」とまで言っておいて、本人の「不良ではないですね。タバコも吸わないし、酒も飲まない。恥ずかしがりやですね」というコメントが続くという振り幅っ! その加藤選手と“近畿のケンカ柔道一直線”高田敬久選手の試合は、あの高山善廣vsドン・フライ戦を彷彿させる壮絶な殴り合いとなり、今大会のベストバウト賞を受賞。そのためか試合当日は第2試合だったのだが、DVDでは1番最初にラインナップされた。
そして、やはり紹介せずにいられないのが、“横濱ギャング連合 ハマの狂犬”黒石高大選手の試合だ。第一戦の試合後に起こった乱闘シーンを黒石選手自ら解説(?)しているシーンは、実に興味深い! そして今回の試合は恐らく黒石選手にとって第一戦での敗北よりも悔しいと思われる、まさかの秒殺失神KO負け。そこから乱闘シーンへとつながっていくのだが、第一戦のDVDでは短めだった乱闘シーンが、今作では結構長めに収録されている。また、バックステージでの黒石選手の思いもよらぬ姿まで収録されているのが、このシーンはその後黒石選手の成長ストーリーを見続ける者にとって、ぜひ見ておきたい貴重なシーンだ。
“九州天下一の大目付”野村剛史選手の煽りV〜試合の映像を見ると、前田日明がTHE OUTSIDERを作ったキッカケとなった九州・天下一武道会のレベルの高さがよく分かる。また、“リアルサラリーマン”酒井知一選手の煽りVでは「腰痛を治すために始めた格闘技。さらに独自のトレーニング法で己の体をいじめ抜く姿は、まさにアウトロー」というナレーションに多少無理を感じながらも、この試合以降酒井選手がTHE OUTSIDERに出ていない理由が明かされている。しかしステテコ姿で次々に関節技を仕掛ける酒井選手を見ると、ぜひまた出て欲しいと思わずにいられない!
3月の両国大会ではメインを張った“インテリジェンスタイガー”秀虎選手は、自ら格闘技を始めた理由を語っているのだが、これがなかなか興味深い。第一戦では黒星だった秀虎選手だったが、今大会ではわずか1R22秒でKO勝利している。
この大会でMVPに輝いた“杉並の黒い三連星 大嶽ブラザース”大嶽伸次選手の煽りVでは、黒い三連星と呼ばれた大嶽三兄弟の武勇伝が紹介される一方で、大嶽選手が美人妻の反対を押し切ってTHE OUTSIDERに出場するため、大嶽三兄弟が初めて力を合わせてトレーニングを積むという、まるで小説のようなストーリーが紹介される。
その大嶽選手は試合でも終始攻め続け、最後は変形のスリーパーで勝利するのだが、リング上に大嶽三兄弟が並んで勝利を喜ぶシーンも、煽りVを見た後だとなかなか感動的。
前半のほうに黒石選手が第一戦の乱闘を自ら振り返っているシーンが収録されていると書いたが、DVDの最後のほうには“乱闘を仕掛けられた側”である秋山翼選手の感想も収録されている! その秋山選手は今大会では黒石選手の兄貴分である“横濱ギャング連合”高垣勇二選手と対戦していて、煽りVも含めてこれまた必見! 前田実行委員長は「OUTSIDERがボクシングの大会で、『あしたのジョー』を探すなら高垣君は○○○」と評している。
2008年10月19日にディファ有明で行われた『第三戦』(angle JAPANの記事はこちら)のDVDを紹介しよう。
まず目を引いたのが、前回のDVDでチラッと収録されていたルールミーティング、さらに客入れ前に前田日明から出場選手たちに檄を飛ばす貴重なシーンが収録されていた点。回を重ねるごとにバックステージの収録時間が増えているのは、THE OUTSIDERファンには嬉しいところか。
ちょっと魔裟斗に似ているだけあって(?)立ち技を得意にしている“無傷のインテリジェンスタイガー”秀虎選手は、煽りVで「総合難しいっすね」と語っている。この大会では“アームレスリング九州制覇 豪腕ブルドーザー”上田達也選手と対戦した秀虎選手は、終始上田選手のタックルを切って得意の打撃に持ち込み、2R終盤にはパンチのラッシュでダウンも奪った。この試合はこの大会のベストバウト賞に選ばれたのだが、DVDでは前半に収録されている(実際は第21試合)。
“血に飢えた 津田沼のピットブル”小林聖人選手vs“喧嘩一見お断り 平安京の逝神”玉井智浩選手の試合は、いかにも不良同士の喧嘩という雰囲気。それだけにわずか4秒での決着は、DVDで見てもインパクト十分! 前田実行委員長も「文句のつけようがないパンチ攻撃ですね」と高評価している。
現在のOUTSIDERには欠かせない存在になっている“レジェンドオブ 池袋ウエストゲートパーク リアル刃牙降臨”渋谷莉孔選手がこの大会で衝撃デビュー。煽りVは対戦相手の“唱えよ! 復活の呪文 闘い続ける前橋の暴走柔道王”中村啓紀選手が、第一戦の1週間前に交通事故に遭ったことを実際の“事故現場”で語るシーンから始まる。それ以外にも大小様々な“ツイていないこと”が起きていたという中村選手は、何とかその流れを変えようとOUTSIDERに出場するものの、ここまで連敗!
背水の陣で挑んだ渋谷戦だったが、渋谷選手の戦慄のハイキックを浴びまくった上、最後はパンチでKOされて鼻血がしたたり落ちるという衝撃の試合映像が収録されている。さらにいまやお馴染みとなった渋谷選手のビッグマウスだが、「手加減したんですけど、弱ぇんだよ!」というマイクアピールも完全収録! その渋谷選手を前田実行委員長は「久しぶりに素質のある子に会った」と大絶賛している。試合後の舞台裏でも完全に明暗分かれた両者……必見だ!
夜の蝶をはべらせて毛皮を羽織って入場する姿がお馴染みの“栃木真岡 夜の代表取締役”松本峰周選手は、この大会で“鶴見のハリケーン”岩本一貴選手と対戦。後に前田実行委員長が“ステゴロフック”と命名する喧嘩パンチで、岩本選手とお互いに足を止めてガンガンに殴り合う試合に、会場がヒートアップしていくのがよく分かる。
さらに“九州天下一武闘会 大目付”野村剛史vs“一匹頑固一徹 北海のローンウルフ”大谷匡弘選手の一戦は、試合も見応えがあるのだが、試合後に前田実行委員長が両者にまつわる“裏ストーリー”を明かしてくれている! その話を聞いた上で見る、試合後舞台裏での両者の様子がまたいい感じだ。
この大会のMVPに選ばれたのは、“名門 鈴蘭高校裏番長 格闘彫師”吉永啓之輔選手。試合前の煽りVでは「まだ諦めてないですね、プロの道」と語る吉永選手には十分スター性が感じられる。フィニッシュシーンの三角絞め→変形腕十字も実に鮮やか! 前田実行委員長も「風格が出てきた」と語ったほどの吉永選手。次巻のDVDにはいよいよあの男との試合が……
この大会あたりから試合後のマイクなどで、常連選手の名前を挙げて対戦要求をする選手が増えてきた感がある。大会も3回目を迎え、どの選手がどれくらい強いかも分かってきた証しだ。
また、今大会は黒石選手が出場していないこともあって“OUTSIDER名物(?)”の乱闘は起きなかったが、“ヨコハマ・メタルシティ 陵辱のバッドチューニング”土橋政春選手の下ネタ満載のマイクアピールや、ヒクソン・グレイシーばりに山梨の山の中でトレーニングをする“国宝級 山梨の殺戮グラディエイター”小川丈二選手、“封印解放 アウトレットブルース”川村勝選手のリング上からのプロポーズといった試合以外の見どころもDVDにはバッチリ収録されている。
第四戦は旗揚げイヤーを締めくくる大会のため、オープニングではズラリ揃ったスター選手を紹介。OUTSIDER初見の方も、とりあえずここで紹介された選手を抑えておけば問題ない! そこから前田日明実行委員長が映画『クローズZEROII』とのコラボで両国国技館に進出することを発表する挨拶へと続く。
第2試合で勝利した“四国高松のナチュラルクレイジー”RφWDY選手はクレイジーさが売りなのだが、「四国の高松から交通費も実費で来て、ジムの仲間から集めた応援金も渡してもらえず、食うモノも食えずカツカツでした」という切実なマイクアピールが、何ともギャップがあっていい感じ。また、19歳の“天下無双のアクロバティックファイター”赤石明幸選手vs.29歳の“殺戮のレッドタランチュラ”小柳稔幸選手の一戦は、年齢差10歳ながら両者ともにスキンヘッドで強面! 試合前から激しい睨み合いを展開した上で真っ向勝負と、何ともOUTSIDERらしい試合だ。
その名の通り赤パン一丁と、名前をコールされたときのポーズがミノワマンと同じ“幕組のリアル・ザ・全身凶器”クロダマン選手の試合のあとには、元ZERO-ONEの営業で白ハチマキにZERO-ONEジャージで入場してきた“天下一武闘会 毛利軍の軍師”土屋クレイジー選手の試合が続く。ただし、DVDでは「ミノワマン」にも「ZERO-ONE」にも触れてはいないのであしからず。また、OUTSIDERでは数少ない重量級同士の対決となった“杉田神拳 サザンクロス”杉田匠選手vs.“人生無敗 喧嘩神降臨”雨宮禎選手の試合は、ド迫力で見応えのある試合となったのだが、試合後勝った方も負けた方も可愛らしい笑顔を見せてくれる!
“沼津の一撃空手王”渡辺竜也選手vs.“スパルタンM”内藤マゾヒスト選手の一戦は、さすがはマゾヒストというだけあって、内藤選手は打撃をもらっても舌を出して挑発してみせる。ところが、腕を取られながらも渡辺選手は力一杯上から殴り続けて勝利。試合後、渡辺選手が笑顔でマイクアピールしている後ろで、内藤選手が倒れたまま起き上がれない状態なのが映っており、本当に大事に至らなくてよかったと思える。
その試合の次にホストの“ハマの夜王 ドンペリストライカー”アユム選手が登場するというのも、ある意味でOUTSIDERらしいカオス感がある。煽りVではアユム選手がスワロフスキーを散りばめたドンペリを片手に歌舞伎町を闊歩するシーンや、ホスト最強決定戦『ホストボンバイエ』で優勝したことが紹介されている。
やはり“Mr.THE OUTSIDER”の黒石高大選手が出ているか、出ていないのかはDVDを購入する際に1つのポイントになるかもしれない。第一戦、二戦と試合では負けているものの見どころを作ってくれた黒石選手。第三戦は試合前のコメントを聞いていても、相当気合いが入っているのが分かる。そして問題の黒石選手がリングインするなり、対戦相手の“北区の鬼山賊”小森信綱選手と超至近距離で睨み合い、何事か言い合うと黒石選手がいきなり右ストレートを叩き込むシーンもバッチリ収録されている!
村上和成に止められた黒石選手が「アイツが先にヘッドバットをしてきたんだ!」と主張する声も聞こえるし、問題のシーンはスローによるリプレイまで収録されている。そしてノーコンテスト裁定が下され、前田実行委員長が黒石選手に言葉をかけると、その言葉を受けて黒石選手がマイクで謝罪、さらに黒石選手がバックステージで仲間たちにも謝る姿を見ると、やはり黒石選手に感情移入してしまう。
THE OUTSIDER常連組の“法曹界の最強弁護士 人権派 柔術弁護士”堀鉄平選手は、一度流れている“喧嘩所茨城制圧 ザ・WORST”加藤紘也選手と満を持しての対戦となったのだが、加藤選手が大幅に契約体重をオーバーしていたため試合直前まで落とそうとしたが落とせず、あとは堀選手が試合を受けるかどうかまでをドキュメンタリータッチに紹介している。また、ほとんど練習しないのに、第1戦のときに前田実行委員長から「OUTSIDERがボクシングの大会で、『あしたのジョー』を探すなら高垣君は○○○」とまで評された“濱の勇二”高垣勇二選手がまたも勝利したのだが、「俺が褒めちゃったもんだから余計練習しなかったんですよ。頼むから練習してくれって」と前田実行委員長も苦笑い。
実際の大会ではセミだった“アマ最強戦士 アウトサイダー殴り込み”佐野哲也選手vs.“第3回大会MVP 格闘彫師”吉永啓之輔選手と、メインだった“第1回大会MVP 暴力大魔王”加藤友弥選手vs.“浦安皇帝降臨”清水征史郎選手だが、DVDでは順番を入れ替えて収録されている。それは佐野選手vs.吉永選手の試合がこの大会のベストバウト賞、勝った佐野選手がMVPに選ばれたからだと思われるが、さすがは前田実行委員長が「プロの試合を含めて、ここ5年間くらいに見た中で一番いい試合でした」と大絶賛しただけあって、DVDで改めて見ても本当にいい試合である。
また煽りVもなかなか凝っていて、すでにOUTSIDERではスター選手の吉永選手が自らジムまで設立してプロを目指している一方で、佐野選手を紹介する際にはジョシュとの記念写真や週プロを織り交ぜながら基本的にはプロレスファンで、とても佐野選手が“強そうに見えない”ように作られている! しかし、そういう方向に振っておいていざ試合を見ると、1Rから激しい殴り合いに。さらに2Rに入ると打撃戦は激しさを増し、どちらが倒れてもおかしくない展開になっているのだから“前フリ”が効いている!
後半やや押され気味だった佐野選手が、ラスト10秒で組み付いてのヒザでダウンさせてパウンドを振り下ろして勝利する場面は、某統括本部長でなくとも「鳥肌立った!」と言いたくなる。前田実行委員長も「第4戦目にしてこういう試合が出てきたんですごく嬉しい」と改めて絶賛。敗れた吉永選手は「アウトサイダーが○○○○○○に負けました!」と絶叫。やはりこの2人の再戦はどこかで見たいし、再戦が実現する前にこのDVDを見ておくことをオススメしておく。
この大会は何と言っても会場が両国国技館というのが、まず一番の“特別”である。しかもアマチュアの大会とは思えない大型ビジョン&入場ゲートが設置されていただけに、選手たちのテンションがガンガンに上がっている様子が収録されている点がまず面白い! プロレスにしろ、格闘技にしろ、国技館進出は1つのステータスだが、なかなかそういった部分で出場選手のテンションが上がっている姿を目にすることはないので、実に新鮮である。
しかもアマチュアらしく大会前はテンションアゲアゲだが、いざ入場直前になるとやはり緊張の面持ち……そういう姿を見ると、より感情移入してしまうというか、親近感を感じてしまう。また、これだけ大きな舞台で負けてしまった選手は悔しさも大きいようで、試合後カメラに向かって再戦を要求したり、不満をブチまけたり、会場の雰囲気に飲まれたことを悔いる選手が結構いた。プロの選手がカメラに向かってやるアピールとはひと味違う、OUTSIDERの選手らしい“生の感情”を吐き出す感じが、見ているほうにもビンビン伝わってくる。
“和製ヴァンダレイ 鋼の喧嘩術師”友田隆志選手は、そのニックネーム通り見た目もファイトスタイルもヴァンダレイ・シウバ似なのだが、煽りVの中で子供の頃はガリガリでいじめられっ子だったことを告白している。そこに「華奢……この強面が?」という秀逸のナレーション! だが、そんな強面な友田選手はプロを目指して夜は練習、昼はバイトという勤労少年である。対する“川口連合 第十代総長”武井勇輝選手はそのキャッチフレーズ通り、完全に『警視庁密着24時』的な世界。これぞTHE OUTSIDER特有の元いじめられっ子vs.暴走族!
試合中に腕を骨折しながらも痛い素振りを見せなかった武井選手。そういう男の部分を高く評価した前田日明だが、武井選手の実年齢を聞いてもの凄く驚いているシーンがまた最高! 何でも戦い方見て、てっきり武井選手を30過ぎの大ベテランと思ったらしいのだが、実はまだ22歳だということを知った前田は「それならめちゃくちゃ才能あるじゃん!」と大絶賛しているのだ。
そして進化する“Mr.OUTSIDER”黒石高大選手は、黒石劇場と題してこれまでの名場面がダイジェストで収録された上で、「練習なんかしねぇよ!」と言っていた黒石選手の練習風景が収録されている! 対戦相手は爆笑問題やアンタッチャブルの番組の構成作家をしている“太田総理の最強ブレーン ザ・タイタン”野口悠介選手。大会前、爆笑問題やアンタッチャブルは番組内で「野口が勝てるわけないじゃん!」と散々言っていたが……
試合を見ると黒石選手が、“ファイター”へと変貌を遂げつつあるのがよく分かる。打撃はもちろん、関節技もよく防御しているのだ。そして見応えある試合が終わった瞬間、リング下に不穏な空気が流れ、黒石劇場名物の乱闘騒ぎになるのだが、残念ながらほとんどカットされている! まぁ危うく大会中止になるかもしれなかったことを考えれば仕方ないか。ただ短時間ながら収録されている臨場感溢れる乱闘シーンと、試合後の野口選手のコメントは一見の価値アリだ!
後半に収録されている“関東伝説チーマー 元KGB幹部 千葉の鬼夜叉”内藤裕選手vs.“リアル刃牙”渋谷莉孔選手の試合なんかは、いかにもTHE OUTSIDERらしい危険な雰囲気が煽りVからもビンビン伝わってくる。それでいて内藤選手が試合後に渋谷選手にかけた言葉がまたいい!
そのほかにも“顔面美容整形マシーン”中村俊太選手vs.“寝ても立ってもフルボッコ 取手の拳帝”幕大輔選手の因縁ストーリーや、OUTSIDER常連組対決の“インテリジェンスタイガー”秀虎選手vs.“格闘彫師”吉永啓之輔などTHE OUTSIDERも5戦目となり、ナチュラルストーリーが生まれてきたことをDVDを見ていて実感した。
ストーリーという点でいえば、この次の第六戦へとつながる“栃木真岡 夜の代表取締役”松本峰周選手が、試合後客席で観戦していた佐野哲也選手にマウスピースを投げて対戦表明をするシーンや、第六戦にも出場する“ストリートファイトの重鎮 人生喧嘩任侠”中村トッシー選手が、OUTSIDERデビュー戦にも関わらず見せた冷静な試合運びっぷりもバッチリ収録。そして“封印開放 アウトレットブルース”川村勝選手に関して「育児3カ月目って寝られないんですよ。自分にも経験があるから分かる。よく出てきたなぁって」としみじみ語る前田パパにも要注目だ!
5日、リングス主催の不良系格闘技イベント『THE OUTSIDER(ジ・アウトサイダー)第6戦』が東京・ディファ有明で開催された。吉永啓之輔、黒石高大といった常連組のスター選手は不参加ながらも、ビートたけし、猫ひろしといったお笑い界のスターが観戦に訪れるなど、相変わらずの注目度の高さ。果たして今回は、どのような個性派ファイターが集ったのか?
試合結果や試合経過の詳細は格闘技専門サイトなどをご覧頂くとして、「日刊サイゾー」では、気になる選手をクローズアップ。試合の合間に単独インタビューを試み、その素顔に迫った。
THE OUTSIDER 第6戦 ポートレート【01】
高田竜次選手(撮影/水野嘉之)
平成生まれの火の玉小僧
弾丸セブンティーン
ヒカル(茨城・17歳・初出場)
初出場、最年少ながら、10歳以上年上の相手をバチバチにシバキ倒し、大会MVPをかっさらったのが、この若武者。ヒカルだ。アイドル然としたルックス、爽やかな笑顔が印象的だが、なかなかの根性者のようである。試合直後に話を聞いた。
──ハートの強さが伝わってくる戦いぶりでした。
「本当っすか? ありがとうございます! フハハハハッ(と白い歯を見せて笑う)」
──出身地は北海道と聞きました。いつ、茨城(のマッハ道場)に出て来たんですか?
「中学を卒業してすぐですね。勉強が大嫌いだったので、高校行く気はまったくなかったです。すぐにでも格闘家になりたかったんで」
──どんな中学生だったんですか?
「俺、学校あんまり行ってなかったんですよ。乗り物が好きなんで、いつも車や単車を乗り回して遊んでばかりいました」
──中学生が車? ゴーカートですか?
「いや、クラウンっす(笑)。当然、無免ですけどね。フハハハハッ」
スター候補の誕生である
──いつかはクラウン、と言われる高級車を中学生にして乗り回すとは……。お父さんのクラウン?
「いや、自分で手に入れました」
──どこで?
「言えないっす(笑)」
──その資金は?
「中学時代から、仕事してたんですよ。土木やったり、鳶やったり、トラックの助手やったり。そんなこんなで、学校通ってる暇なんか全然なかったですね」
──現在はどんな生活を?
「もうワルさはやめて、寮住みしながら格闘技の練習浸けですね。でもそれだけじゃ生きていけないので、ラーメン屋で働いてます」
──将来は?
「プロになりたいっすね!」
その資質を十分に感じさせる、戦いぶりとキャラクターであった。
THE OUTSIDER 第6戦 ポートレート【02】
神風飛丸選手(撮影/水野嘉之)
GTA福岡
ダグラス(福岡・22歳・初出場)
ディファ有明のロビーを歩いていたら、外国人風の大男と正面衝突しそうになった。が、その男はスパパパン! と軽やかにサイドステップを踏み、衝突を咄嗟に回避すると、涼しい顔で選手控え室に消えていった。ハンマー投げの室伏選手のような彫りの深い顔、どでかい背中、タダモノではない素早い動き──。
彼こそが、荒くれ者が集う福岡・天神地区を10代なかばで制圧したギャング組織の親玉、ダグラスであった。さっそく追いかけ、話を聞いた。
──試合前にすいません。お話をおうかがいしてよろしいですか?
「どうぞ(ニコリとも笑わずバンテージを巻き続ける)」
──ダグラス選手はハーフなんですか?
「お母さんがアメリカ人、お父さんが日本人ですね」
──どんな少年時代だったのでしょう?
「警察の世話にばかりなってましたね。混血ということでいろいろ差別とかあったんで、つねに戦ってました。筋が違うことがあったなら、人間の当然の本能として、戦うしかないという感じで」
──福岡・天神地区のギャングのリーダーだそうで。
ダグラスを攻め立てる中畑
「ええ。ただ、ギャングっていうのはワルさばっかするんじゃなくて、俺らはクラブとかに入ってくる不良外人とかを倒しに行く部隊。いわば世直し隊ですね。筋が通ってないことが嫌いなだけであって、向こうが見下さん限りは、こっちは喧嘩腰にはなりません。サムライっす」
──しかし、天神地区といえば、不良のめちゃくちゃ多いエリアですよね。
「たいしたことないっす。敵なしですね。喧嘩じゃ負けたことないです。中学生のときから高校生や大学生と喧嘩してたんで。オモチャですよ」
──喧嘩の武勇伝は?
「1対3とかは日常茶飯事。1対5ぐらいで戦ったこともありますね」
──それでも負けなかった?
「はい。複数と戦う場合は、まず真っ先に一番強い奴を倒しに行けば勝てるんですよ」
──格闘技に目覚めたのは?
「野性的な本能ですね。でも、ジムには通ってないです。ストリートだけ」
──今日の対戦相手である中畑泉選手(青森・33歳・初出場)に関する情報は?
「俺も田舎やけど、向こうももっと田舎やなー、と。ま、おっさんやけん、大丈夫でしょう」
聞けば聞くほど頼もしいダグラス。この男が負ける姿などまったく想像できなかったが、試合はなんとドクターストップで敗北。日本は広い、格闘技の世界は厳しい、としか言いようのない結末であった。
THE OUTSIDER 第6戦 ポートレート【03】
五十嵐充選手(撮影/水野嘉之)
宇都宮オリオン通りの闇皇帝
栃木のラストエンペラー
菱沼郷(栃木・30歳・出場3回目)
素っ頓狂な言動と、出れば負けるネタキャラとして大会名物になっていた菱沼が、まさかの番狂わせで会場を沸かせた。対戦相手は、見るからに強そうなケンカの天才こと花道(大分・28歳・出場2回目)。下馬評では「菱沼に勝ち目なし」と言われており、ゴングが鳴ると案の定、花道の打撃を一方的に浴び続ける苦しい試合展開に……。ところが、パンチが徐々に大振りになりつつあった花道のアゴに、菱沼渾身の右フックがヒット! これで一気に形勢が変わり、よもやの逆転勝利を収めた。
得意満面で引き上げてきた菱沼に話を聞く。
──今日はいつもと違って、道着を脱いで戦いましたね。その心は?
「柔道やると膠着しちゃうんで、今日は打撃で勝負しようと。だから脱ぎました」
──相手は大分で喧嘩無敗を誇る強敵でしたが、怖くなかったですか?
この右一発でひっくり返した
「全然。不良を更生させるのが私の仕事ですからね。元不良である、この私がね」
──菱沼さんは学生時代、相当なワルだったんですか?
「ブレザーにボンタン姿で、『灰皿持って来い!』なんて威張ってました。ま、頭は坊主刈りでしたけどね(笑)」
ここで後輩が割り込んで来て、「菱沼さんは学生時代から自分の手を汚さないというか……。後輩から先に行け、みたいな人でした」と口を挟む。それを聞いた菱沼は、「一番強い人間は最後に控えてないとね」と言ってふんぞり返る。
──アウトサイダー初勝利。今日はまっすぐ帰る気にならないのでは?
「うん。ピンサロでも行こうかな」
暗がりで勝利者メダルをなくさないよう、気をつけてください。
リアル刃牙
渋谷莉孔(東京・23歳・出場3回目)
アウトサイダーデビュー以来、猟奇的な言動で注目を集める渋谷。前回の両国大会では終始ピリピリムードで、試合前も試合後もノーコメントだったが(前回大会の様子はこちら)、その試合に敗れたことによって、なにやら憑き物が取れた印象だ。今回、主催者・前田日明のひらめきによりメインイベントの大役を任された彼は、「(スター選手不在の)留守を守る」と悪童らしからぬ意気込みを見せ、試合に臨んだ。
結果は惜しくも判定負けに終わったが、試合後の渋谷は饒舌であった。ロビーで対戦相手の高田竜次(東京・22歳・初出場)に遭遇すると、「おおっ! あー、くそーっ! 結構(格闘技を)やってたんでしょう?」と話しかける。「気持ちが強いから倒れないね」と高田がエールを送ると、「いやぁ、負けたよ」と悔しさを覗かせながらも笑顔の渋谷。
果敢に攻めた渋谷だったが……
その後、控え室にて記者会見。
──敗れはしましたが、いい試合でしたね。
「どこがいいんだよ、もう! でもパンチ、結構当たってたでしょ? 効いてなかったけど(笑)。走ったりするから、これからは!」
──メインで戦った感想は?
「気持ちよかったですね。ただ、(大会全体が)レベルアップしちゃった。留守番できなくてごめんなさいという感じ、みんなには」
──次回大会は?
「出るっすよ。何言ってんすか。馬鹿じゃねーのおまえ(笑)。休むわけねーだろ!」
憎まれ口は相変わらずだが、何かが確実に変わりつつある渋谷であった。
THE OUTSIDER 第6戦 ポートレート【04】
渋谷莉孔選手(撮影/水野嘉之)
サイゾー賞はトッシー選手に
ストリートファイトの重鎮 人生喧嘩任侠
中村トッシー(茨城・33歳・出場2回目)
前回同様、演歌をバックに着流し姿で花道に現れ、涼しい顔してリングインしたトッシー(前回大会のインタビューはこちら)。対するは、喧嘩処 茨城制圧をキャッチフレーズにする加藤紘也(23歳・出場3回目)。「俺は制圧された覚えがない!」と同郷のトッシーが噛み付いて、実現した一戦である。接戦も予想されたが、蓋を開けてみたらトッシーの圧勝。とりわけ見事だったのは、開始早々、しょっぱなに放ったパンチ一発で加藤をダウンさせたシーンだ。
試合直後に話を聞いた。
──最初のパンチは、狙いすました一発ですか?
「いや、まぐれです。ジャブを出したら、たまたまいいタイミングで入っただけです」
強豪相手に冷徹に打撃を打ち込んでゆくトッシー
──加藤選手とは、試合後に喋りましたか?
「ええ。彼が『体重オーバーしたのに試合を受けてくれてありがとうございます』と挨拶に来てくれたので、『気にしないでいいよ。試合が終わってしまえば、同じ茨城の仲間同士。今後もし機会があれば一緒に練習をやろうじゃないか』と声をかけました」
──宿敵を倒してしまいましたが、今後の目標は?
「うーん……、ずっと加藤君を倒すことしか考えていなかったので、すぐには思い浮かばないですね。まあ、自分はもう若くないんでね。同じマッハ道場のヒカル君や幕君など、若手が後ろに控えてるんで、彼らをサポートするほうに力を入れたいという思いはありますね」
強くて渋くて優しくて、おまけに謙虚で二枚目なトッシー。今後もアウトサイダーで活躍して欲しいとの願いを込めて、「サイゾー賞」を贈呈だ!
THE OUTSIDER 第6戦 ポートレート【05】
中村トッシー選手(撮影/水野嘉之)
国士舘のリアル・ジャイアン
剛田武(神奈川・20歳・出場2回目)
本名が同じという理由で「ジャイアン」を名乗ってはいるものの、実はいい奴なんじゃないかと思われるのが、この剛田だ。試合前、控え室にてインタビュー。
──いい体してますね。見るからに強そうですが、バックボーンは?
「バックボーンは……ス、ストリートです!」
──優しそうな顔してますけど……。
「気のせいです!」
──「人のものは自分のもの、自分のものは自分のもの」それがジャイアンイズムですが、そんなに強欲なんですか?
「はい! 人がベンチプレスをやってると、『どけ!』と言って蹴散らします!」
──ところで、いつも着ているジャイアンウェアーは、どこで入手したんですか?
「幼少のころに母親に作ってもらいました。……いや、市販です!」
若武者同士、魂のぶつかり合い
どこまで本当でどこまで嘘かよく分からないインタビューとなったが、試合中のいじめっこぶりだけはジャイアンそのものだった。元暴走族のヘッドで地下格闘技9連勝中の山田史博(神奈川・21歳・出場2回目)をキックとパンチで封じ込め、2-0の判定勝ち。
試合後に再び話を聞いた。
──強かったですね。
「いや、気のせいです!」
──次に戦いたい相手は?
「……中村トッシーさんです! 今度、マジでお願いします!」
最後の返答だけは、どうやらマジだ。さて、リングスならびに中村トッシーは、この対戦要求を受け入れてくれるだろうか……?